「発作を止める」だけでは終わらない──神経科専門医・大竹大賀先生が語る、てんかん診療とQOL、そしてCBDという補助的選択肢


「発作をどう止めるか」だけではなく、
「その子らしく生活できているか」をどう守るか──。

神経科診療の現場では、発作回数だけでは測れないQOL(生活の質)の問題に、日々多くの獣医師と飼い主が向き合っています。

今回お話を伺ったのは、脳神経科診療を行う大竹大賀先生(小滝橋動物病院新目白通り第2高度医療センター )。

国際基準に基づいたてんかん診療を行いながら、難治性てんかんや神経疾患症例に数多く向き合う中で、CBDを「補助療法の一つ」としてどのように見ているのか、率直に語っていただきました。

大竹先生が最初に語ったのは、神経科診療において最も大切にしていることでした。

「やっぱり飼い主さんの不安を取り除きたい、寄り添いたいというのが一番です。」

神経疾患の中には、痛みや不安など異常が“見えにくい”ものが含まれます。

発作がいつ起こるか分からない。
この先どうなるか予測できない。
薬を一生続けるのかもしれない。

そうした不確実性の中で、飼い主さんは慢性的な不安を抱えています。

だからこそ、大竹先生は、ペットたちの病気だけではなく、不安を抱えている飼い主さんも診ているのだと感じました。

てんかん診療というと、「発作回数」や「発作間隔」が重要視されます。

もちろんそれらは重要な指標です。

しかし大竹先生は、

「頻度だけでは見ていません」

と語ります。

例えば、半年に1回しか発作を起こさない、しかし一度起こすと数日重積する。

そんな症例では、回数だけでは実態を評価できません。

さらに、発作頻度の多い子では、日中ぼーっとしている、活動性が落ちる、遊ばなくなる、「犬らしさ」が失われる、といったQOL低下が問題になります。

一方、発作コントロールが良くなると、

「遊ばなかった子が遊ぶようになった」
「快活になった」

という変化が見られることもあるそうです。

「発作だけを抑えればいいってものでもない」

という大竹先生の言葉が、とても印象的でした。

難治性てんかんでは、複数の抗てんかん発作薬を併用することとなります。

大型犬で薬剤が4種類にもなると、月10万円以上の治療費になることもあるといいます。

さらに問題になるのが、副作用です。

  • 鎮静
  • ふらつき
  • 活動性低下
  • 食欲低下

発作を抑える代わりに、犬らしさそのものが失われてしまうケースもあります。

そのため大竹先生は、

「副作用が出ない範囲での最大量」

を意識しながら、飼い主さんと診察の都度相談の上でQOLとのバランスを取り続けていると話します。

CBDについて、大竹先生は非常に明確なスタンスを示していました。

「あくまで補助療法であることは強めに伝えます。」

つまり、抗てんかん発作薬の代替としてではなく、

標準治療を土台とした補助的介入としてCBDを位置づけているのです。

一方で、神経科診療の中で「可能性を感じる場面」はあると語ります。

特に印象的だったのは、

「てんかん発作持ちの子って、不安症を同時に持っているケースがある」

という指摘でした。

大竹先生は、220症例を対象とした2021年の報告にも触れながら、不安、緊張、QOLや情動面に対するCBDの補助的な可能性に注目していると話してくださいました。

興味深かったのは、CBDに関する相談が飼い主側から増えているという点でした。

「薬はやりたくないけど、何かしてあげたい」

そうした飼い主から、CBDについて相談を受けるケースがあるといいます。

特に、自身でCBD使用経験がある方や、自分で調べている方、あるいは薬より先に自然に近いものへの安心感があるという飼い主では、受け入れられやすい印象があるそうです。

一方で、開始後には肝酵素上昇、軟便などについてはモニタリングが必要であり、導入時には慎重な観察が必要とも述べています。

インタビュー終盤で、大竹先生は非常に興味深い症例について触れました。

「問題行動なのか、神経疾患なのか分からない」

そんな境界症例において、CBDが有効だったケースがあるというのです。

特に、くるくる回転行動を示す猫症例では、

「抗てんかん発作薬よりCBDが一番効いている印象」

と語られていました。

これは、神経疾患と行動学の境界領域において、CBDが新しい補助的選択肢になりうる可能性を示唆しています。

6月11日のウェビナーについて、大竹先生が最も強調されたのは、「診断の重要性」でした。

抗てんかん発作薬は、一生続く可能性がある、長期QOLを左右する治療です。

そのため、

  • 本当にてんかんなのか
  • 問題行動との鑑別は十分か
  • 神経疾患として整理できているか

という入口が極めて重要になると語ってくださいました。

最後に、大竹先生はCBDについてこう締めくくりました。

「CBDは、神経科疾患の補助治療としてはかなり合理的だと思っています。」

さらに、鎮痛、不安、QOL、神経と行動の境界症例

など、既存治療だけでは埋めきれない隙間を支える可能性についても言及されました。

「そういう選択肢があることを、まず知ってもらうこと」 それが大切だと語る大竹先生の姿勢からは、中立性と現場感の両方が感じられました。

てんかん診療は、「発作を止める」だけでは終わりません。

  • その子らしく生活できているか
  • 遊べているか
  • 飼い主と穏やかに過ごせているか

そうしたQOL全体をどう支えるかが、神経科診療の重要なテーマになっています。

その中でCBDをどう位置づけるのか。

大竹先生のインタビューは、

「標準診療を土台にしながら、補助的介入をどう整理するか」

という、非常に現実的で誠実な視点を示してくれました。

私たち日本アニマルCBD協会は、今後も獣医師・専門職の皆様と連携しながら、科学的根拠と臨床現場の両方を大切にした情報発信を続けてまいります。