特発性てんかんの犬に対するCBDオイル長期併用の経過


レークランドテリアにおける抗てんかん発作薬併用下での発作管理、在宅記録、QOL変化を含めた長期モニタリング症例

症例のポイント

  • レークランドテリア、8歳去勢雄(体重:約5.2〜5.5kg)
  • 2018年冬に初回発作を認め、MRI検査および脳波測定を経て特発性てんかんと診断
  • 抗てんかん発作薬による治療を継続しながら、CBDオイルを補助的に併用
  • 2025年12月28日より、新しいCBDオイルとしてASTRAVETへ移行
  • 飼い主によるLINE記録、発作動画、日常生活動画、旅行時の写真・動画をもとに長期経過を観察
  • 近年は発作のない期間が継続し、海や山での旅行、妹犬との遊び、家庭内での役割行動が維持されている
  • 姉犬との死別、新しい妹犬の迎え入れという大きな環境変化を経験しながら、生活の質を保っている
  • CBDは抗てんかん発作薬の代替ではなく、獣医師管理下でQOLと長期経過を支える補助的選択肢として評価

本症例は、レークランドテリア、去勢雄のLちゃんにおいて、特発性てんかんに対する抗てんかん発作薬治療を継続しながら、CBDオイルを補助的に併用し、長期にわたり在宅での経過を観察した症例である。

Lちゃんは、2017年11月11日生まれ。

2018年冬に初めててんかん発作を認め、MRI検査および脳波測定を経て、特発性てんかんと診断された。

診断後は、抗てんかん発作薬による治療を継続し、発作頻発期を経験しながらも、飼い主による丁寧な観察と記録のもと、長期的な管理を行ってきた。

CBDオイルについては、長期にわたり継続使用されていた。

2025年12月28日より新しいCBDオイルASTRAVETへ移行したと記録されている。

本症例の特徴は、てんかんを持つ犬が家族の中でどのように生活し、どのような役割を持ち、どの程度その子らしい日常を維持できているかを、長期的に観察している点にある。

本症例では、CBDオイルを抗てんかん発作薬による治療を継続したうえで、生活の質、情動の安定、日常行動の維持を支える補助的介入として位置づけた。

使用したCBDオイルは、日本アニマルCBD協会が推奨する犬用CBDオイルのASTRAVET 5%である。(2025年12月28日より使用開始)

製品濃度や投与量は時期により調整されており、飼い主は開封日、ストック状況、投与方法、嘔吐や食欲変化との時間的関係を詳細に記録していた。

CBDオイルは主に食事やヨーグルトに混ぜて投与されていた。ときに嘔吐や胃腸の不調がみられた際には、CBDそのものだけでなく、投与時の食材、空腹時間、ヨーグルトの温度、暑熱環境、硬いジャーキーなどの影響も含めて評価した。

導入および継続にあたっては、以下の点を観察項目とした。

● 発作の有無
● 発作様行動と非発作性行動の鑑別
● 食欲、嘔吐、便の状態
● 過度な鎮静やふらつきの有無
● 活動性、散歩意欲、旅行時の反応
● 妹犬との関係性
● 飼い主にとっての投与継続のしやすさ
● 抗てんかん発作薬との併用下での長期的な安全性

てんかん症例にCBDを用いる場合、既存治療との関係を明確にすることが重要である。本症例では、CBDオイルは抗てんかん発作薬の代替ではなく、主治医による診療と薬物療法を基軸とした補助的な選択肢として運用した。

Lちゃんは、特発性てんかんと診断された後、発作の頻発期を経験した。

発作が起こるたびに、飼い主は大きな不安を抱えながら、発作の様子、発作後の状態、日常生活への影響を観察してきた。

犬のてんかんでは、発作そのものだけでなく、発作がいつ起こるかわからないという不確実性が、飼い主の生活にも大きな影響を与える。

旅行、留守番、散歩、同居犬との関わりなど、日常のあらゆる場面で発作が起きないかという不安が伴う。

本症例では、抗てんかん発作薬を継続しながら、CBDオイルを併用し、長期的な経過を観察した。

近年の記録では、発作がない状態が続き、日常生活の安定が得られている。

一方で、発作以外の体調変化は散発的に認められた。

たとえば、空腹時の嘔吐、食後の吐き戻し、長距離ドライブ時の震え、パンティング、流涎、歯ぎしり様行動、口をくちゃくちゃする様子などである。

これらの行動は、発作歴のある犬では焦点発作との鑑別が問題となることがある。

しかし、本症例では、意識状態、発生タイミング、食事との関連、嘔吐内容、その後の回復状態を確認しながら、神経発作だけでなく、悪心、胃酸逆流、車酔い、暑熱ストレス、咽喉頭や食道の違和感なども含めて評価した。

CBDオイル併用後、Lちゃんは抗てんかん発作薬を継続しながら、長期にわたり発作のない期間を維持している。

飼い主からの定期報告では、「発作はありません」「元気です」という記録が繰り返しみられた。

これは、単に発作が抑えられているというだけでなく、家族の中でその子らしい日常を過ごせていることを示す重要な情報である。

また、2026年には、併用中の抗てんかん発作薬であるゾニサミドの血中濃度を測定した。

結果は、一般的な基準値より低め(6.6 ㎍ /mL)であったが、発作が出ていない臨床経過を踏まえ、主治医からは現時点で大きな問題はないと説明されている。

抗てんかん発作薬の血中濃度は、治療評価において重要な指標である。

一方で、血中濃度だけで治療成否を判断するのではなく、発作頻度、発作の重症度、生活の安定性、副作用の有無、飼い主が観察する日常行動を総合して評価する必要がある。

本症例では、発作がない状態が続いている一方で、胃腸症状や車酔い様行動などの変化も観察されていた。

そのため、CBDオイルの有用性を発作抑制のみに限定せず、長期的な生活の安定、飼い主の観察、獣医師との情報共有を含めた包括的な管理の中で評価した。

本症例では、飼い主からLINEによるテキスト記録に加え、発作時の動画、口をくちゃくちゃする様子の動画、CBDオイル投与に関する動画、旅行先での写真や動画が共有された。

動画・写真記録により、以下のような点を確認することができた。

● 発作時の姿勢、持続時間、意識状態
● 発作後の回復状態
● 口をくちゃくちゃする行動が発作性か、悪心や咽喉頭違和感に近いか
● 車内での緊張、震え、パンティング、流涎の程度
● CBDオイルの投与受容性
● 妹犬との遊びの質
● 旅行先での活動性
● 海、山、水辺での行動意欲
● 飼い主から見たQOLの維持程度。

Lちゃんの長期経過を考えるうえで重要なのは、同居犬との関係変化である。

Lちゃんには、長く一緒に暮らした姉犬がいた。姉犬は、家庭内で大きな存在感を持つ犬であり、Lちゃんにとっても生活のリズムを形づくる相手であった。

飼い主の記録には、Lちゃんがキッチンの手前でスタンバイし、オヤツやごはんのタイミングを姉犬に知らせに行くことが「Lのお仕事」であったと記されている。

これは、家庭内での役割行動であり、単なる同居以上の社会的関係を示している。

2024年11月、姉犬が亡くなった後、Lちゃんは単独生活となった。

散歩では、排泄を済ませると最短コースで帰りたがる様子がみられ、キッチン前でのスタンバイ回数も減少した。

姉犬の存在の大きさが、Lちゃんの行動変化として表れていた。

その後、2025年春に、新たにレークランドテリアの雌犬である妹犬を迎えた。

妹犬は、明るく活発で、テリアらしい主張を持つ若齢犬であった。

迎え入れ当初、Lちゃんは妹犬の活動量に戸惑う場面もあったが、徐々に関係性を築いていった。

その後の記録では、Lちゃんが妹犬にトイレのお手本を見せる、妹犬の排泄を知らせる、プロレス遊び、引っ張りっこ、追いかけっこ、仰向けになって噛ませる遊びなどが確認されている。

これらは、Lちゃんが単に若い犬に圧倒されているのではなく、年長犬として相手を受け入れ、遊びや学習の相手として関わっていることを示している。

てんかん管理におけるQOL評価では、発作頻度だけでなく、こうした社会的役割の維持が重要である。

「遊べること」
「教えられること」
「家族の中で役割を持つこと」
「旅行先で自然を楽しめること」

これらは、検査値だけでは測定できないが、慢性疾患を持つ犬の生活の質を考えるうえで欠かせない指標である。

本症例では、CBDオイルを長期にわたり在宅で継続した。

オイル製剤は、食事やヨーグルトに混ぜる、口腔内に入れる、必要に応じて投与量を調整するなど、家庭内で扱いやすい剤形である。

慢性疾患を持つ犬のケアでは、薬理作用だけでなく、「続けられるかどうか」が重要である。

犬が強く嫌がる、投与に時間がかかる、飼い主の負担が大きいといった場合、いくら理論上有用な選択肢であっても、長期的な在宅ケアとしては継続しにくい。

本症例では、飼い主がCBDオイルの開封日、残量、ストック状況を継続的に報告しており、日常管理の中にCBDオイル投与が組み込まれていた

また、嘔吐や食欲変化がみられた際には、投与タイミングや食材との関連を確認し、必要に応じて投与方法の調整を検討した。

2025年12月28日からは、ASTRAVETへ移行した。

移行後も、飼い主からは「特段変化はありません」「嘔吐、発作もありません」と報告されており、少なくとも移行初期に明らかな不耐性は認められていない。

獣医師にとって、本症例から得られる示唆は、CBDオイルの評価を製品単体で行うのではなく、家庭内での受け入れやすさ、投与記録、併用薬、食事、生活イベントと合わせて評価する必要があるという点である。

犬の特発性てんかんは、慢性的な神経疾患であり、発作管理と生活の質の維持を両立させる必要がある。

本症例では、MRI検査および脳波測定を経て特発性てんかんと診断され、抗てんかん発作薬による治療を継続した。

CBDオイルは、既存治療に置き換わるものではなく、主治医による診療と抗てんかん発作薬を基軸とした管理の中で補助的に併用した。

犬のてんかんに対するCBDの臨床的有用性については、近年、複数の臨床研究で検討されている。

一部の研究では、CBDを抗てんかん発作薬に追加することで発作頻度の低下が示唆されている。

一方で、用量、製剤、併用薬、対象症例、評価期間には差があり、現時点でCBDを標準治療の代替として位置づけることはできない。

したがって、本症例においても、発作のない長期経過をCBDオイル単独の効果として断定することはできない。

抗てんかん発作薬による治療、飼い主の観察、生活環境の調整、体調変化への早期対応、同居犬との関係性など、複数の因子が関与していると考えるべきである。

一方で、本症例の価値は、CBDオイルを長期併用した犬において、発作の有無だけでなく、日常行動、胃腸症状、車酔い様行動、家族旅行、妹犬との関係変化まで継続的に記録されている点にある。

とくに獣医師にとって重要なのは、以下の3点である。

第一に、CBDをてんかん症例に用いる際には、抗てんかん発作薬との併用を前提とし、発作頻度だけでなく副作用や全身状態を継続的に観察する必要がある。

第二に、発作歴のある犬にみられる口のくちゃくちゃ、吐き気、流涎、震え、パンティングなどの行動は、すべてを発作とみなすのではなく、消化器症状、車酔い、暑熱ストレス、咽喉頭違和感などと鑑別する必要がある。

第三に、慢性神経疾患の管理では、QOLを具体的に観察することが重要である。

Lちゃんの場合、発作がないことで、旅行に行ける、海や山で遊べる、妹犬と関わる、家庭内で役割を持つといった生活の広がりが維持されていた。

これは、てんかん管理の目標が「発作を減らすこと」だけではなく、「その子らしい生活を支えること」であることを示している。

本症例では、特発性てんかんと診断されたレークランドテリアにおいて、抗てんかん発作薬による治療を継続しながら、CBDオイルを補助的に併用し、長期的な在宅経過を観察した。

体重は約5.2〜5.5kgで推移しており、小柄なレークランドテリアである。

2018年冬の初回発作後、MRI検査および脳波測定を経て特発性てんかんと診断され、その後、抗てんかん発作薬による治療を継続してきた。

CBDオイルについては長期にわたり併用され、2025年12月28日よりASTRAVETへ移行した。

移行後も、初期報告では嘔吐や発作の増加は認められていない。

近年は発作のない状態が継続し、家族旅行、海や山での活動、妹犬との遊び、家庭内での役割行動が維持されている。

姉犬との死別、新たに妹犬を迎えるという大きな生活変化を経験しながらも、Lちゃんは家庭の中で頼れる兄としての役割を持つようになった。

ただし、本症例において、発作が出ていない経過をCBDオイル単独の効果として断定することはできない。

抗てんかん発作薬による治療、飼い主の観察、生活環境の調整、同居犬との関係、加齢に伴う変化など、複数の要因が関与していると考えられる。

CBDオイルは、特発性てんかんの診断や治療に置き換わるものではない。

発作が疑われる場合には、まず獣医師による診察、必要に応じた神経学的評価、画像検査、血液検査、抗てんかん発作薬の選択と調整が必要である。

そのうえで、CBDは、獣医師の評価のもと、既存治療と併用しながら、発作管理、情動の安定、日常生活の質を支える補助的選択肢のひとつとして検討される可能性がある。

本症例は、てんかんを持つ犬の長期管理において、発作頻度だけでなく、「遊べること」「旅行に行けること」「家族の中で役割を持てること」「妹犬と関われること」といったQOL指標を含めて評価する重要性を示す症例であった。

すべての症例に同じ経過が得られるわけではない。

しかし、適切な診療、継続的な観察、飼い主と獣医師の情報共有があれば、てんかんとともに生きる犬のQOLを支えることは可能である。

本症例は、その一例として、今後の獣医療におけるCBD活用と在宅モニタリングの意義を示すものである。

※CBD製品の使用は、持病、併用薬、体質により注意が必要である。使用を検討する場合は、必ず獣医師に相談すること。
※本症例は、飼い主の同意のもと、個別症例として紹介するものであり、CBDの効果を保証するものではない。